あなたのおかげで、実は、地球が再生されている、というお話(ハミング通信56号より)
自然栽培で、地球を再生。
例えば、自然栽培の田んぼに行くと、絶滅危惧種の植物や生物が生息していたり、周囲の田んぼと全く違う生態系を見ることができます。メダカ、アメンボ、ドジョウ、日本タニシ、オタマジャクシなどが、すいすい泳いでいます。うっすらピンク色の可愛い野花など、田んぼが生きている!とワクワクするのです。
一方、農薬を使用した田んぼでは、「雑草」すら枯らしてしまう「除草剤」を散布しますし、肥料を使った田んぼでは、繊細なバランスのとれた生態系から離れてしまうので、昔ながらの野花や生き物たちが暮らすことは難しくなります。
それでも、3年から5年くらい、自然栽培を続けると、自然は本来の生態系を取り戻します。自然栽培の田んぼと普通の田んぼの違いについて、面白い例があるのでご紹介します。
十数年前、新潟県の佐渡島にある自然栽培の田んぼに、トキ(野生絶滅種で日本の国鳥)が舞い降りて話題になりました。舞い降りたのは自然栽培の田んぼで、トキは違う田んぼには行こうとしませんでした。それから何年後に、また姿を現したトキは、やっぱり自然栽培の田んぼに舞い降りたのです。これを見た関係者たちは、農薬や化学肥料を抑制して、トキの餌場となる田んぼを提供していこう、という自然再生の取り組みを開始しました。これが「佐渡モデル」として広まったのです。
※下の写真は木村秋則さんの講演資料より
僕がここで言いたいのは、環境問題といえば暗いニュースばかりで、ぜんぜん明るいニュースがない!
でも、自然栽培なら、田んぼ、畑、果樹園、どこでもいいのですが、一つ一つのユニットで、着実に地球環境が再生されているという、小さいけど確立されている成功パターンとしての事実なんです。
荒れた田んぼを、一枚一枚、自然栽培の田んぼに切り替えていった農家さんは、地域のおばあちゃんに「あなたたちが来てから、ホタルがいっぱいになって、地域が生き返った」と言われたそうです。それから、後継者のいない農家さんたちは、こぞって、その農家さんに「あなたに田んぼを任せたい!」と言って田んぼを託されたそうです。シンプルに言ってしまうと、自然栽培を食べる人が増えて、地球の再生に繋がっているのです。
一方で、大変心苦しい話ですが、【農業は、地球最大の環境破壊】ということも、お伝えしなければなりません。これから90億となる人口の食を支える産業なので、誰も触れようとしないし、テーマとして取り上げられることもないのですが、農業は、森を壊し、土、川、海を汚し、資材とエネルギーを使いまくっているのです。日本ではついに、地下水が飲めなくなりました。漁師さんも、ぜんぜん魚が取れなくなりました。昔の半分、7割減、9割減、なんてニュースも、連日報道されています。
この原因の1つに丘の問題があります。日本では江戸時代から「魚つき保安林」というのがあって、漁師さんが魚が採れるように、森林の栄養分を、海の栄養分として供給しています。現在日本では5.8万haが「魚つき保安林」として指定されいるそうです。それほど、丘の問題は、海の問題に直結することが分かっているのに、農薬が川に、海に、地下水に、流れこんでいるのに、仕方がないから、という理由で、黙認されています。最近、漁協の子供達(小学生)が、しびれを切らして、自然栽培の田んぼを開始して話題になりました。大人が動いてくれないから、自分たちでやる、いうことで、聞いていて胸が苦しくなりました。
※下の写真は木村秋則さんの講演資料より
こんなふうに、自然は全て繋がっていて循環しています。私たちの存在も、体も、食べ物も、全部つながっています。だから、単に「無農薬のお米を食べている」という理解ではなくて、「私がイキイキすることで、どんどん地球を再生させている」と考えて欲しいのです。なぜ、自然栽培の田んぼにトキが舞い降りたのか、それは生命の連鎖が田んぼ全体から感じられたからではないでしょうか。こうしてみると、「自然の野菜は腐らず枯れていく」とか「自然栽培のお米は腐らず発酵していく」傾向にあるのも、意味があってそうなっている。「腐る(死)」というのは、生物がこの世の役割を終えたので、分解を早めて生まれ変わることです。「発酵(生)」には、まだこの世で関わりや、なすべき役割があるので、その旅は続いていくのです。
先日、米作り、50年の福井の農家、黒田さんが言ってました。「どんな些細なことでも、全てが味に出る」「お米は毎日食べるものだから、農家が田んぼで何をしたのかなんて、全て分かってしまう」のだと。こうした研ぎ澄まされたお米は、まだまだ少ないけれど、農産物を応援してくれている、あなたのおかげで、こうして地球が再生されています。
※下の写真は福井県の自然栽培農家の黒田さん